生物?環境

気温2℃上昇でサンゴ礁が成長不能になり沿岸浸水リスクが増大する

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(Image by Dudarev Mikhail/Shutterstock)
 地球温暖化が進むとサンゴ礁の成長力が低下する可能性が高まります。熱帯西大西洋の400カ所以上のサンゴ礁のデータ分析から、気温が現在より2℃上昇すると、2100年までにほぼすべての礁が成長不能になり、礁上の水深が0.7?1.2メートル増加して沿岸浸水リスクが大幅に増大すると予測されました。

 サンゴ礁は多くの魚や生き物のすみかであるだけでなく、水質浄化や防波堤など、海岸を守る大切な役割も果たしています。しかし近年、地球温暖化による海水温の上昇やサンゴの病気、水質の悪化などによって、世界中で衰退が進んでいます。特に西大西洋地域のサンゴ礁では、白化現象や死滅が広がり、成長力が弱まっていることが問題となっています。日本を含む8カ国が参加する今回の国際研究チームは、米国フロリダやメキシコ、ボネール島(ベネズエラ沖)など400か所以上のサンゴ礁を調べ、過去の化石サンゴ礁のデータと現在の生態データを組み合わせて、成長の様子を分析しました。その結果、現在のレベルでCO2排出が続くと、2040年までに70%以上のサンゴ礁の成長が止まり、現在から2℃の気温上昇により、2100年には99%以上のサンゴ礁が成長不能になることが分かりました。一方、海面上昇は今後加速すると予測されていることから、サンゴ礁の成長不足は礁上の水深増加をもたらし、高潮や沿岸の浸水リスクを高め、藻場やラグーン(外界から隔てられた浅い水域)といった周辺の海の環境も大きく変化すると考えられます。本研究結果は、サンゴ礁を守るためには修復活動だけでなく、陸と海の環境管理を改善するとともに、地球温暖化を現状から2℃未満に抑える努力が不可欠であることを示唆しています。

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プレスリリース

研究代表者

必威体育_足彩比分直播-娱乐app官网生命環境系
HARVEY Benjamin 助教

掲載論文

【題名】
Reduced Atlantic reef growth past 2℃ warming amplifies sea-level impacts
(気温上昇が2℃を超えると大西洋のサンゴ礁の成長が低下し、海面上昇の影響が増大する)
【掲載誌】
Nature
【DOI】
10.1038/s41586-025-09439-4

関連リンク

生命環境系
University of Exeter(Faculty of Environment, Science and Economy)